日本の女性の14人に一人が異性から無理やりに性交された経験があると答えています。(2014年内閣府調査)。
高校生の性暴力の実態調査(2004年)でも、女子の 5.3~37.2%、男子の 1.5~20.7%が様々な形で性被害を受けたと答えています。
あなたは友人から、隣人から性被害の話を聞いたことはあるでしょうか。
あなたの住む地域にも性暴力被害者はいます。
しかし、性被害者と出会ったことがないと話す人も多くいます。
「もし、性被害に遭ったことが知られたら私はこの地で生きていけません」という言葉を被害者の方からよく聞きます。
私自身も、父から受けた13歳からの7年間の被害経験について、公の場で話すことができたのは23年間後のことです。
言えば、「どうしてもっと早く言わなかったのか」「嘘をついているのではないか」「もう忘れなさい」と自分が責められることを恐れていたからです。
それは被害者を責め、加害者に利益を与える言葉です。
被害者は苦しみのうちに沈黙し、被害者の沈黙は、加害を続行させ更なる性暴力を生み出します。
被害者を保護しないことは、性暴力を容認する文化に力を貸すことになります。
私は2010年から顔と名前を出して、講演や活動をしています。よく、どうして実名で活動しているのかと聞かれます。
どんなに苦しい経験でも、その経験が私の世界を作っています。被害者だから感じられること、考えていること、被害経験があるから見える世界、それを伝えることで多くの人が性暴力の問題を理解し、何かを感じ、動いてくれると実感しています。名前や顔を出せないという方もいます。それもいいのです。
性暴力を受けた人が、自分の被害を知られたら地域で生きていけないと脅えるのでなく、「あなたの話を信じるよ」「あなたのせいじゃないよ」と伝えられ、被害者を暖かく力強く支えることができる社会を作るのが私たちの希望です。
そのためには被害者の幸福と利益を中心に考えるヴィクティム・センタード(被害者中心主義)という価値観を日本に根付かせる必要があります。ヴィクティム・センタード(被害者中心主義)は、アメリカで実践されている支援の形であり、被害者の痛みと心、希望に寄り添う事で、状況を改善する効果があります。
大切なのは被害者の価値観や思いを知り、希望に沿った支援が実施されることです。
性暴力被害経験者の心情や状況などはまだまだ知られておらず、支援側とずれが発生することはよくあります。
被害者の抱えている困難や苦痛、必要な助けを伝え、課題を共有することで、問題が解決されるよう働きかけを行う事が私たちの活動の根幹です。
被害者が希望に沿った適切な支援を受け、支えられることで、健康さや健全性を取り戻し、問題を明らかにし、性暴力を容認し、見過ごす文化を変え、性暴力のない社会を実現できると考えています。
そのことは、将来の加害を防止し、全ての人の性的健康・安全が守られる社会をつくることにつながります。
共に性暴力のない、全ての人の性的安全・健康が守られる社会を作りましょう。
代表理事/SANE(性暴力被害者支援看護師)
山本 潤