2023年5月31日(水)、公益財団法人ジョイセフの主催で行われた、女性の健康のためのアクション国際デー 緊急院内勉強会『 国連UPR審査のジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告 誰もが安心して、自分らしく生きられる日本へ!』にSRHR関連団体の1つとして、一般社団法人Springのスタッフ2名が参加させていただきました。
リレートークの場で、Springのスタッフが訴えた内容をご紹介いたします。
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一般社団法人Springは、性暴力被害当事者および支援者の団体として、性被害の実態に即した刑法の改正を求め、国会や政府機関に被害実態や被害者の声を届けてきました。
現在日本では、刑法性犯罪規定の改正法律案が国会で審議されています。
改正案では、罪名が「不同意性交等罪」となり、「同意しない意志の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、あるいはそれに乗じた」性行為を処罰する要件となりました。
「相手が同意していないにも関わらず性行為をすることが、性暴力の本質である」と認められたためです。
私達はこの大きな前進を歓迎し、今国会での成立を強く望んでいます。
一方で、この改正案には課題もあります。
課題の1つ目は、公訴時効のさらなる延長です。
改正案での公訴時効は、現行法から5年延長され、不同意性交罪で15年となりました。
この根拠として法務省は、2020年の内閣府調査の結果を示しています。
調査で「無理やり性交等をされた被害があった」と回答した142人のうち、被害を誰かに「相談した」と答えたのが52人。その大多数が、相談した時期を「5年未満」と回答した、という結果です。
この結果をもって5年延長とするのは妥当では有りません。
なぜなら、被害を誰にも相談していない約6割の回答者の存在を無視することになっているからです。
約6割の回答者が、調査回答後に誰かに相談する可能性を考慮すれば、より大幅な延長の必要性すら示唆されています。
公訴時効を大幅に改正したドイツやフランスの例に習って、日本政府も国が主導して大規模な実態調査を行い、被害実態に見合った公訴時効となるよう検討を行うべきです。
課題の2つ目はYesMeansYes型への転換です。
改正案の不同意性交罪は、適切に運用されれば、NoMeansNo型と評価しうるものです。
しかしそれだけでは、被告人に故意がないとして無罪になる事案が、今と同様に後を絶たないのではないかと危惧しています。
性的同意は、アクションを起こす者が相手方に確認を取るべきものです。
同意を確認しなかった場合は処罰される、というYesMeansYes型の刑法は、スウェーデンやフィンランド等で実現してきており、日本も見習うべきです。
また、改正法成立後には、施行後調査をおこない、処罰されるべき事案が、適切に捕捉されているかを確認する必要があります。
捕捉できないことが懸念される事案として、主なものが地位関係性を利用した性暴力です。
今回の改正までも私達は、明らかに対等でない関係性は明記した上で処罰規定を設けることを求めてきましたが、叶いませんでした。
ただ幸いなことに、こういった課題をふまえて、衆議院では法案修正がなされました。
「施行後5年を経過した場合において、施策の在り方について検討を加え」という、期限を明記した見直し条項、「性的な被害を申告することの困難さの実態についての調査」などが附則として盛り込まれました。
この改正はゴールなのではなく、スタートであると明記されることは、ありがたいことだと思っています。
まずは、今国会で改正案が成立し、スタートラインに立つこと。
そして、附則に明記された施行後の検討や調査を、確実に実行すること。
それに伴って社会啓発を行い「性的同意」の概念を「社会通念」として日本に根づかせていくこと。
そういった一つ一つの歩みを止めず、性暴力のない社会にむけ、今後も力を合わせていけますと幸いです。
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今まさに国会で審議されている刑法性犯罪の改正法律案の内容や私達の要望について、
各国大使、超党派国会議員、若者・SRHR市民団体の参加者の皆様に、お伝えする貴重な機会となりました。
来賓された議員のご挨拶でも、改正法律案の今国会成立にむけた力強いメッセージをたくさん頂き、たいへん励まされました。
今後も様々な機会で、日本の刑法性犯罪改正の動向や課題についてお伝えしてまいります。引き続き、応援していただけますと幸いです。