2025年4月14日、韓国・ソウル市にある「アハ!青少年性文化センター」を訪問しました。
このセンターは、ソウル市によって設立された公的な青少年向け性教育施設で、性に関する正しい知識の普及や悩みの相談、性文化の啓発を目的に活動しています。
ちなみに… 「アハ!」という団体名には、学びや閃きをえたときに「あー!」という表現のことをさしています。このセンターを設立する際に、教育・支援を受けたら、「あ、わかった!」という言葉が出るように、この名前をつけたそうです。

(アハ!青少年性文化センターの皆さまと)
センターの主な事業は以下の4つです:
- 体験型の性教育プログラムの提供
- 性に関する個別相談サービス
- 青少年の自主的な活動の支援
- 性教育活動家の育成
教育プログラムや相談には、性被害の予防だけでなく、性犯罪の加害者からの相談も多く寄せられており、「性被害の再発防止」という観点からの支援も行われている点が特徴的です。
実際に現場を見学する中で、性教育や暴力予防の取り組みは単なる“知識の伝達”にとどまらず、「楽しい!」「もっと知りたい!」と子どもたちが自然と学びたくなるような工夫に満ちていることに感銘を受けました。
子供たちが受け身ではなく、積極的に学ぶことに焦点を置いた体験型の教育プログラムには多くの工夫がありました。

▲ 脱出ゲームのような形で学ぶことができる内装
生徒がそれぞれ椅子に座り、お題に関してアノニマスネームで話し合う場所 ▼

センター内には、子どもたちの気持ちや心を守るための様々な配慮がちりばめられていました。たとえば、子どもたちが安心してくつろげるハンモックの設置や、性別にとらわれないジェンダーレストイレの導入などがあります。
利用者がリラックスして過ごせるようにハンモックがあります
トイレの設計にも利用者の声が反映されており、「男性にもプライバシーのある空間が必要」という意見や、「月経カップを使う女性が増えているため、洗面台とトイレが一体となった個室が便利」といった声をもとに、細やかな工夫が施されていました。
また、施設の装飾や設備の多くが手作りであることから、職員の皆さんの温かな心配りが随所に感じられました。

▲ 性教育のためのピザを模したゲーム(手作り)
生理に関して学ぶための道具 ▼

日常生活の中で感じる“違和感”や“不快感”を丁寧に言語化し、自分の気持ちを大切にできる子どもを育てるためには、大人自身がまず感性を開き、子どもとともに学ぶ姿勢を持つことが求められている――そのことを、この訪問を通じて改めて強く感じました。
また、性教育を専門にする機関があること、そこに専属の職員がいて「性教育をする人を育てる」仕組みがあることにも、深く感銘を受けました。日本でも、性教育を“点”ではなく“面”で届けるために、こうした「育成の仕組みづくり」が必要だと実感しています。
そしてなにより、現地での言葉や空気、人の温度にふれることでしか得られない学びがあったことに、心から感謝しています。
<韓国視察の概要> 2025年4月13日〜16日、Springスタッフ・NPO法人ぱっぷす・メディア関係者3名とともに、韓国:ソウルへ現地視察に行きました。 本視察は、同じ文化的背景を持つ東アジア圏の性犯罪規定(刑法および特別法)の法整備や運用に関する調査・研究を行い、現行の日本の刑法性犯罪規定および性犯罪に関する特別法に内在する課題を明らかにすることを目的としています。
①公訴時効撤廃、停止・延長についての意見交換 ②「性的同意」の考え方は社会でどれだけ広がっているか? ③デジタル性暴力へのへの対応と課題は? (順次、各訪問箇所の報告記事を掲載しています)
また、今後下記を予定していますので、お楽しみに。
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※本視察・イベント開催・白書発行は、JSPN/ジョイセフの支援をうけて実施しました。

