【韓国視察報告3】韓国性暴力相談所を訪問しました

2025/05/20

2025年4月14日、韓国・ソウル市にある「韓国性暴力相談所」を訪問しました。

Springは以前、キム・へジョン所長と性文化チームの方との対談でご一緒した経緯があります。

今回の韓国視察もそのご縁で実現し、心より感謝申し上げます。

(韓国性暴力相談所の皆さまと)

 

今回訪問した、韓国性暴力相談所の主な事業内容は以下の通りです。

 

①性暴力被害者の支援

性暴力被害者からの相談及び心理・医療・法律的支援・性暴力被害生存者自助会及び治癒プログラム運営、性暴力被害者生存者保護施設「‘열림터’ 」運営

 

②性暴力を助長する社会文化を変える活動

ジェンダー感受性、人権感受性拡散活動
性差別/性暴力文化を変える活動
性暴力予防教育及び性暴力関連書籍出版
付設研究所「ウルリム」運営

 

③女性の人権を保証できる制度整備のために政策提言活動

性暴力特別法及び刑法制/改正運動
警察、検事、捜査官及び司法府意識改善運動
女性、性暴力に関する政府政策監視及び提言
国際人権条約基盤法/制度監視及び批判

 

意見交換会では、まず韓国性暴力相談所の方より、団体の活動紹介や韓国フェミニズム運動に関するプレゼンテーションがありました。


この相談所は1991年に開所しました。韓国社会は、女性の経験についてうまく語れない雰囲気があったそうで、韓国のそのような認識を変えるために、先頭に立って様々な取り組みをされてきました。こちらの動画は、相談所開設30周年記念で作られた映像で、韓国のフェミニズム活動の歴史の一部をご覧いただけます。

(ミーティングの様子)

こちらの相談所は、長年韓国において女性の権利向上に非常に重要な役割を果たしてきました。下記は、今回様々なお話を伺った中で、印象的だった内容です。

 

・被害者が自分が体験したことを、あらゆる表現方法を使って、絵をかいたり、ダンスしたり、歌ったり、話したり、そういういろんな表現をする「話す大会」。

これは年1回行ってきた性暴力被害当事者サバイバーのベントでしたが、規模が大きくて、毎年開くのが大変となり、それを毎月の「小さな話す大会」という小さいイベントにしたそうです

 

・高位職の政治家など注目すべき性暴力が起こったときは、●●委員会を立ち上げて対応するようにしている。例えば、一つの相談所で対応するのが大変な大規模な事件は(N番部屋事件など)、共同対策委員会を全国単位の相談所や女性団体が集まって、大規模な事件にはみんなで対応している。統合的な支援をするために、事例会議をすることもある

 

・被害者の相談や支援活動を行っているソーシャルワーカーがバーンアウトしないように、相談を行う対策をもうけるプログラムも設けている。相談チームでは、サバイバーと一緒に成長していくために、いろいろな相談支援や治療費の支援を行っている



その後、事前にお送りした質問表をもとに丁寧にお答えいただきました。

具体的には、

 

・未成年への公訴時効が見直されて以降、支援現場でどのような変化があったか?
・韓国でのMeToo運動などを通して、「性的同意」の概念は広がったか?

・韓国でのMeToo運動の盛り上がりと韓国性暴力相談所の活動は、どのように相互に影響を与え合ったか?
・団体運営における、国からの補助金などの割合について
・中長期の被害者支援は行っていますか?行っているとしたら、どのような支援体制ですか?

・支援員のバーンアウト予防対策について

親族性暴力公訴時効廃止のための討論会について。
この「親族性暴力公訴時効廃止」の社会的背景や、韓国性暴力相談所がどのようにこの件について活動しているか

(公訴時効に関係する内容については、このあとに行われた「法律家たちとの性暴力・公訴時効についての懇談会」でじっくり伺うことが出来ました)

 

など、質疑応答だけでなく、お互いの国の実情や、長年にわたって組織運営・活動継続をするための工夫など、情報交換も活発に行われました。



この日、お話の中で「はじめは被害者としてサポートした方が、今は友達のような関係で、一部の方は支援者として歩みを進めている」というストーリーを伺い、サバイバーのレジリエンスを感じることができ心があたたかくなりました。



韓国性暴力相談所の皆さま、本当にありがとうございました!非常にエンパワメントされる素晴らしい時間でした。

 

<韓国視察の概要>

2025年4月13日〜16日、Springスタッフ・NPO法人ぱっぷす・メディア関係者3名とともに、韓国:ソウルへ現地視察に行きました。

本視察は、同じ文化的背景を持つ東アジア圏の性犯罪規定(刑法および特別法)の法整備や運用に関する調査・研究を行い、現行の日本の刑法性犯罪規定および性犯罪に関する特別法に内在する課題を明らかにすることを目的としています。


具体的には…

①公訴時効撤廃、停止・延長についての意見交換
②「性的同意」の考え方は社会でどれだけ広がっているか?
③デジタル性暴力へのへの対応と課題は?

(順次、各訪問箇所の報告記事を掲載しています)

 

また、今後下記を予定していますので、お楽しみに。

  • 視察報告等を行う「院内集会」@8月頃
  • アジア性犯罪白書の発刊(日本、韓国、香港等の性犯罪における法整備や対策をまとめた内容)@8月頃

<関連記事>

 【韓国視察報告1】タクティンネイルを訪問しました
【韓国視察報告2】 アハ!青少年性文化センターを訪問しました

 

 

※本視察・イベント開催・白書発行は、JSPN/ジョイセフの支援をうけて実施しました。

 

 

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