11月19日(火) 衆議院議員会館において、翌日の世界子どもデーに向けた院内集会「海外の取り組みから学ぶ・子どもへの性暴力防止の動き」を6団体と共催しました。
本会においては、Brave Movement(ブレイブ・ムーブメント)共同設立者のボブ・シリング元刑事による挨拶を皮切りに、3人の専門家のスピーチならびに会場との質疑応答が行われました。
ボブ・シリング元刑事(アメリカ合衆国)は、性暴力・児童虐待を担当する刑事として勤務した経験を踏まえ、性暴力が被害者に及ぼす甚大かつ長期的な影響ならびに包括的なケアの必要性を強調しました。(撮影 石田郁子)
一人目のスピーカー、マシュー・マクヴァリッシュ博士(英国・スコットランド)は、自らの被害経験を交えて、性暴力サバイバーが被害を訴えられるようになるまでにかかりうる時間の長さに鑑み、性犯罪の公訴時効撤廃の必要性を訴えました。(撮影 石田郁子)
続いて、ダイアナ・スムート氏(アメリカ合衆国)は、「ダラス子どもの権利擁護センター」における被害児童の包括的なケアのモデルを紹介し、警察・児童保護サービス・検察等の細やかな連携が被害者回復の度合いの改善およびケア費用の節減に役立つと実証しました。(撮影 石田郁子)
最後に、ミエ・コヒヤマ氏(フランス共和国)は、性暴力サバイバーの意見が政策形成に反映される社会を形成するべく、直近欧米各国にて設置の動きがある「サバイバー評議会」の日本での設置を検討するよう、推奨しました。(撮影 石田郁子)
院内集会に先だつ11月9日、コロンビア・ボゴタで「第1回子どもに対する暴力の撲滅に関する世界閣僚会議」が開催されました。そのクロージングセレモニーにおいて、“明かりを灯す人々”として、 子どもやサバイバーがキャンドルを持って登壇しました。
このキャンドルは、子どもへの暴力を終わらせるという国際社会の強い意志と連帯を象徴しており、出席者たちが共通の目標に向けて協力する姿勢を示すものです。セレモニーにはBrave Movement共同設立者のミエさんも参加しており、院内集会の最後にはミエさんから日本のサバイバーに、ボゴタからのキャンドルが手渡されました。
どのスピーチに対しても、国会議員の方々を中心とする参加者の皆様から多くの質問が寄せられ、また質問内容も公訴時効の撤廃を始めとする政策の実現に関する実用的具体的な内容が多く見られました。
以下がそのうちの一例です。(2025/1/6 最終更新)
-
家族間の被害は予防がしづらい、どうしたら予防できるか。
マシューさん:被害当事者だけではなく、社会全体がこの非常に困難な問題にどう対処するべきかを学んでいかなくてはならない。この問題は世界中どの国にも起きている。私は、性的虐待を受けた子どもたちに向けてどのようにしたら回復することができるかを書いた本を出版した。あなたにもし子どもがいるのであれば、子どもに対し真っ直ぐ目を見て「何も話してはいけないことはないんだよ」と伝えることがまず重要。家庭において、家族の間で、「Culture of complete openess(自己開示について完全にオープンな文化)」を実現することが、性被害告発への第一歩。日本で最近、公訴時効の延長が行われたことは素晴らしい前進だと思っている。しかし、ジャニー喜多川氏は70代になっても性加害を続けた。ということは、50年前に被害を受けた人もいるということになる。この犯罪の特徴として、告発するまでに何十年もかかってしまうことがある。被害者が被害について語る言葉を必死に探している間も加害者は加害行為を続け、さらなる被害者を生んでいくのだ。公訴時効の撤廃が唯一の確実な方法である。 -
専門職員の育成はどのように行っているか。
ダイアナさん:CAC(Children’s Advocacy Center※1) 自体をまさに訓練機関として用いている。トラウマ治療ができる人であればこの仕事はできる。学校を出てCACに来て訓練を受けて、やがて資格を得て、それぞれの地域に戻ってコミュニティーに貢献する場合がある。その間、こうした訓練中の人たちを指導する季節採用のセラピストもいて助けられている。司法面接官は実地で訓練されるものであり、心理学者とは異なるので、特別な学位は不要で、決められた特定の訓練を受けるだけでなれる。また、認可を受けたセラピストやソーシャルワーカー、カウンセラーを配置しているが、精神科医はいない(雇えない)。重要なのは、トラウマ治療の専門家がいることである。 -
公訴時効の撤廃を行うのに日本ではハードルが高い、解決の糸口のイメージがあれば知りたい。
ミエさん:Brave Movementには、世界中の国々に「サバイバー評議会」を設置するためのワーキンググループがある。しかし、その実現の方法は各国の政治体制や社会的文脈によって異なる。例えば、フランスではマクロン大統領の相談役が「とても良いアイディアだが、もしフランスに「サバイバー評議会」を設置するならequal systemを尊重する形で行うべき、具体的にはChild Care CommissionやChild Care Inqueryを検討するように」と言ったのがきっかけ、ドイツでは、政治的判断により2015年に性暴力対策を担当する行政官のポジションが設けられ、かかる行政官によって「サバイバー評議会」が設立され、2024年に法制化された(事務的な手続きはすでに完了していた)。アメリカでは、政府が「サバイバー評議会」を設置すると決断し、Together for GirlsやBrave Movementが設定の実現を助けることとなった。日本での実現のためには、日本に最も合う形を考えるのが良いと思う。
こうした海外事例が、政策立案者である国会議員ならびに関係省庁の皆様にとっての参考あるいは指針となり、日本が性被害当事者にとってより生きやすい社会となりますよう、願っております。
共催団体:Brave Movement、 Be Brave Japan、 一般社団法人Spring、 ECPAT/STOP Japan、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン、特定非営利活動法人チャイルド・ファンド・ジャパン、公益財団法人日本キリスト教婦人矯風
※1 CAC:Children’s Advocacy Center 虐待を受けた子どもを支援する機関で、ワンストップサービスの提供が特徴。警察、検察、医療機関、心理カウンセラー、社会福祉士などが一箇所に集まり、連携して支援を提供することで、被害を受けた子どもが複数の機関を回る必要がなく負担を軽減できる。アメリカには1000か所以上あるが、日本には神奈川県内に2か所のみ。