2025年1月28日、ノルウェー大使館の皆さまと「性犯罪の公訴時効撤廃」について意見交換を行いました。
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ノルウェーでは2014年に16歳未満への性犯罪に対する公訴時効が撤廃され、フランスやドイツなどでも一定の年齢以下の被害について公訴時効を廃止する動きが広がっています。
一方、日本では2023年の刑法改正により、性犯罪の公訴時効が5年延長され、例えば不同意性交等や監護者性交等の罪では10年から15年へと延長されました。さらに、被害者が18歳未満の場合は、18歳に達するまでの期間が加算される仕組みになっています。しかし、これでもなお十分とは言えません。
公訴時効は被害者の実態に合っているのか?
内閣府の調査では、被害を受けたにもかかわらず「相談できなかった」と答えた女性は約6割、男性は約7割にのぼります。また、相談するまでに5年以上かかった人も1割を占めています。そして、この方々の存在は、2023年の法改正の際に根拠とされた調査の範囲から切り捨てられているのです。
さらに、私たちSpringの調査では、「挿入を伴う」「身体に触れる」性被害を受けた5899件のうち、被害と認識するまでに16年以上を要したケースが323件ありました。この現実を踏まえると、日本の公訴時効は依然として短すぎると言わざるを得ません。
ノルウェーの法改正に至った背景
ノルウェー大使館の方々によると、特定の事件がきっかけで改正されたのではなく、
「性犯罪は重大な犯罪であり、被害者が訴えるまでに長い時間がかかることを社会が認識し始め、社会全体で考え方が変わったことが、改正につながった」
とのことでした。この言葉から、性犯罪の重大性と性被害を申告することが困難な実態を、より多くの人に理解してもらうことが法改正への第一歩であると改めて実感しました。
さらに、時効撤廃が犯罪の抑止力となっている点についても意見をいただきました。
「時効が撤廃されたことにより、何年経っても罪に問われる可能性があることが、犯罪抑止につながっている」
この視点は、単に被害者の救済だけでなく、加害を未然に防ぐという意味でも時効撤廃の意義を示しています。

ノルウェー大使館の皆さまと
小さな声が社会を動かす
この意見交換を通じて、小さな活動でも続けること、声を上げ続けることの重要性を改めて感じました。1人1人の声が積み重なり、社会の意識を変え、やがて法制度の変革につながるのです。
今後も、性犯罪の公訴時効撤廃に向けた議論を深め、社会全体の意識を変えていくために、声を上げ続けていきます。
私たちは、日本の刑法性犯罪規定がより実態に即した内容となるよう、海外事例の情報収集や意見交換をはじめとした交流を活発に行っています。
そして、参考となる情報を収集・分析すると共に、ロビイングでその結果を議員や省庁の皆さまへ情報提供・意見交換をさせていただいています。
Springが毎月2回発行しているメルマガ「すぷだより」でも、2018年の開始当時から、「海外ニュース」として世界各国の刑法や被害者支援、それを被害実態に沿ったものにするためのムーブメント、#MeToo運動などについて紹介しています。ぜひ購読&注視してください。
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