【韓国視察報告4】法律家と性犯罪・公訴時効に関する懇談会をしました

2025/05/23

4月14日(月)夜、韓国性暴力相談所内にあるイ‧アンジェラホールにて、韓国の法律家の方々と性犯罪の公訴時効に関する懇談会を行いました。

当日は、韓国法律家の皆様から下記のプログラムにそってお話をしていただきました(敬称略)

1. 憲法訴訟と市民運動による公訴時効廃止の取り組み

発表者:イ‧ミギョン(活動家、韓国性暴力相談所 理事)

2. 親族による性暴力の公訴時効廃止運動と法改正案

発表者:ドンウン(活動家、韓国性暴力相談所 性文化運動チーム)

3. 性暴力における民事損害賠償の時効変更について

発表者:チョン‧ミョンファ(弁護士、イチェ法律事務所)

4. 1964年の強制わいせつ被害者による正当防衛再審開始について

発表者:チョ‧ジョンミン(判事、仁川地方裁判所 富川支部)

(懇談会の様子)

 

限られた時間のなかで、質疑応答やディスカッションも活発に行われました。

 

  • 韓国性暴力相談所の理事イ・ミギョンさん、性文化チームのドンウンさんから、性暴力被害者の全体の相談事例の中で、公訴時効が過ぎているのが8.9%、被害当時の年齢をみると、乳幼児期から子ども青少年が80%に達するという相談統計をまとめたグラフが示されました。また、親族による性被害の場合、被害者が被害をうけてから相談するまでかかった期間は16年以下が8.11%、そして64.86%が相談するまでに14年以上がかかっていることがデータで示されました。

 

  • 韓国での公訴時効の延長廃止運動は2006年3月から始まり、弁護士・大学生ボランティアの方々とも協力し2年8カ月分の相談ケースを分析、「私は未だ終わっていない」という題名の討論会が開催され、記者会見、憲法訴願運動、4万人規模の署名活動が展開されたとのこと。また、韓国国会の法制司法委員会で研究が行われ、国会議員300人にその資料が配布されたとのお話がありました。さらに、当事者団体が「公訴時効撤廃を訴える会」を設立し、持続的かつ長期的に活動を続けたとのことです。

 

  • 公訴時効がある理由として、法的安定性が言われているが、それは性犯罪については加害者が起訴からまぬがれる被告人の権利を守っているにすぎない。被害者の声はどうやって反映されるのか。全く反映されていないという声が高まった。さらに、証拠が散逸しているというが、科学的な証拠を収集する技術、分析する技術、DNA証拠を収集する技術も発達していると反論がなされたとのことです。

 

  • チョン・ミョンファ弁護士からは、民法の消滅時効について話があり、刑法での13歳未満の公訴時効撤廃の影響もあって、未成年者が性暴力を受けた場合、成年になるまで消滅時効が進行されないものとするとの一部改正が行われた。しかし20代前半までは保護者の影響から完全に自由になれない場合もある点、PTSDで訴え出るまでに時間がかかる点などで、性暴力については民法の消滅時効も廃止すべきだとの話がありました。

 

  • 最後に仁川地方裁判所のチョ・ジョンミン判事より、公訴時効が過ぎたから、法廷で聞くことができない、だったのが、時間が過ぎてもあなたの話を法廷で聞きます、となるべきだ。被害者がいままで言えなかった理由は、被害が無かったからではなく、余りにもひどい被害を被っているから、言えなかった、ということ。特別の事情があったんだという社会的合意があれば、皆さまの運動も前進すると、励ましの言葉をいただきました。

 

会が終わっても伝えたいこと・聞きたいことが尽きず、会場を出たのは21:30を過ぎていました。

 

2024年12月に来日された判事の方との再会を喜ぶシーンもあり、こうして韓国と連帯が深まっていることを心から嬉しく思っています(韓国判事団の皆さまの来日記事はこちら 【意見交換】韓国判事団の皆さまと意見交換会をしました)。

 

この日は朝から3件の施設訪問があり、この懇談会で一日の締めくくりとなりました。

身体は疲れていましたが、心がとても元気だったのは、離れた土地でも同じように性暴力に向き合っている仲間がいると実感できたこと、公訴時効に関して韓国が一歩先のステップへ進んでいるという事実に励まされたからだと思います。

(ご参加いただいた皆さまと)

 

発表者の皆さま、会場を提供してくださった韓国性暴力相談所の皆さま、ご参加いただいた法律家の皆さま、ありがとうございました!

 

<韓国視察の概要>

2025年4月13日〜16日、Springスタッフ・NPO法人ぱっぷす・メディア関係者3名とともに、韓国:ソウルへ現地視察に行きました。

本視察は、同じ文化的背景を持つ東アジア圏の性犯罪規定(刑法および特別法)の法整備や運用に関する調査・研究を行い、現行の日本の刑法性犯罪規定および性犯罪に関する特別法に内在する課題を明らかにすることを目的としています。


具体的には…

①公訴時効撤廃、停止・延長についての意見交換
②「性的同意」の考え方は社会でどれだけ広がっているか?
③デジタル性暴力へのへの対応と課題は?

(順次、各訪問箇所の報告記事を掲載しています)

 

また、今後下記を予定していますので、お楽しみに。

  • 視察報告等を行う「院内集会」@8月頃
  • アジア性犯罪白書の発刊(日本、韓国、香港等の性犯罪における法整備や対策をまとめた内容)@8月頃

 

<関連記事>

 【韓国視察報告1】タクティンネイルを訪問しました
【韓国視察報告2】 アハ!青少年性文化センターを訪問しました
【韓国視察報告3】韓国性暴力相談所を訪問しました

 

※本視察・イベント開催・白書発行は、JSPN/ジョイセフの支援をうけて実施しました。

 

 

 

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