4月15日(火)午前、Springは韓国の国会図書館で開催された「国会討論会」に登壇し、韓国の国会議員、刑事法研究者、判事、警察行政学教授、性暴力被害者支援団体の皆様と、日本の「不同意性交等罪」改正の意義について議論しました。

国会討論会は、韓国刑事法務政策研究院 先任研究員のチャン・ダヘさんによる司会で開会し、はじめに一般社団法人Springより、「『強姦罪』から『不同意性交罪』へ―日本の刑法改正の内容と社会変化」と題した講演を行いました。
その後、下記の5つのテーマで討論しました。
討論1. 強姦罪の判例と構成要件 | ハン・ジスク(水原地方法院 判事、法院現代社会と性犯罪研究会)討論2. 強姦罪のモデルとその意義 | チャン・ウンヒョク(啓明大学校 警察行政学科 教授)
討論3. 何に同意したのか:親密な関係、酒・薬物による性暴力 | ソン・ランヒ(韓国女性の電話 常任代表)
討論4. 心身の障害、同意/意思決定の条件についての考察 | ナム(障害女性共感 性暴力相談所長、全国性暴力相談所協議会 障害領域代表)
またこの討論会は韓国の与野党(国民の力、共に民主党、祖国革新党、進歩党、基本所得党)からの8名の国会議員、「『強姦罪』改正のための連帯会議」の総224団体の共催で行われました。
私たちは、韓国で13歳未満への性犯罪の公訴時効を撤廃したことについて学ぶことが目的でしたが(詳細は こちら)、一方韓国の皆様は、日本の「不同意性交等罪」の実現に対し、強い期待と希望を感じていました。
韓国の刑法性犯罪規定は、日本の改正前と同じく暴行脅迫・抗拒不能要件があり、「同意のない性行為」というだけでは加害者を処罰することができないとのことで、改正に向けて長年当事者や支援者団体が声を上げてつづけています。
参加した皆様から、「不同意性交等罪」を実現した日本では、何が力になったのか、どのように変化したのかについて、大きな関心を寄せてくださり、大変熱気のこもった議論が交わされました。
以下、国会討論会開催に向けてご尽力してくださった韓国性暴力相談所のキム・へジョン所長からの感想を抜粋してご紹介します。
「討論会はとても内容が充実しており、温かく希望に満ちたものでした。
日本チームは公訴時効の問題をさらに調査したいと語っていました。また、「性的同意」に関する文化や教育を広げ、「君が同意したと勘違いしただけだ!」という誤信・故意否認の主張が力を持たないようにしていこうと述べていました。「同意したと思ったから」は、強姦罪改正に反対する理由になるのではなく、むしろそのような現実を変えるために改正し、市民とともに努力していくこと――それこそがSpringの持つ力なのだと感じました。
韓国では暴行・脅迫の基準が狭く、判例によってその範囲を広げていくべきだと主張する法律家も見られます。しかし日本では、罪刑法定主義のもと、判例で広げるのではなく、立法で明確にすべきとの議論が形成されたとのことです。したがって、「不同意性交罪」は処罰の拡大ではなく、処罰範囲の明確化と位置づけられています。
日本チームは、韓国で13歳未満および障害のある方に対する性暴力について公訴時効が“廃止”されたことに非常に勇気づけられたと語っておられました。だからこそ、日本の刑法改正の力を、条文がほとんど同じである韓国でも引き継いでほしいと、連帯の思いを伝えてくださいました。」
記者会見について
午後はハンギョレ21など韓国メディア5社から取材を受け、日本の「不同意性交等罪」への改正の経緯やSpringの活動について様々な質問が寄せられました。取材には啓明大学警察行政学科のチャン・ウンヒョク教授もご同席してくださいました。
下記URLは、取材の様子を報じたハンギョレ21による記事になります。
‘동의 없는 성관계’ 처벌 시작한 일본… 한국은?(「同意のない性交」処罰を始めた日本…韓国は?)
この記事では、日本における「不同意性交罪」導入の背景と意義に加え、それを推進した一般社団法人Springの活動について詳述してくださっています。2019年に4件の性暴力事件で無罪判決が下されたことから社会的な非難が高まり、「フラワーデモ」など全国的な抗議運動が展開されたこと、その流れを受け、2023年には被害者の同意なしの性行為を処罰する「不同意性交罪」が日本の刑法に導入されたこと、その結果、警察の捜査効率が向上し、性暴力被害者が以前と比べて声を上げやすくなってきていると説明、さらなる課題として「明示的な同意」を基準とするシステムの導入が議論されていると報じています。
記事ではまた、日本のこの動きを踏まえ、韓国でも同様の法改正の必要性について議論が進むべきだと提案しています。
国会討論会、メディア取材ともに、大変熱い議論となり、次の改正に向けてとても大きなエネルギーと勇気をもらうことができました。
性暴力被害当事者が生きやすい社会の実現に向けて、私たちはさらに多くと方々と手を携えて、日本で性被害の実態により即した、さらなる刑法改正を達成するためにがんばっていきますので、引き続きご注目・ご支援いただけますと幸いです。
<メディア掲載>
- 4月15日付:キョンギョン新聞
「同意のない性行為は強姦」・・・日本はこのように「不同意性交罪」を作った
“동의 없는 성행위는 강간”···일본은 이렇게 ‘부동의성교죄’ 만들었다 4월 15일 경향신문 배시은 기자
https://www.khan.co.kr/article/202504151511001#c2b
- 4月22日付:女性新聞「不同意強姦罪の導入が無実を阻止する」…日本の立法成功の後には「スプリング」がある
“비동의 강간죄 도입이 무고 막는다”… 일본의 입법 성공 뒤엔 ‘스프링’이 있다 4월 22일 여성신문 신다인 기자
https://www.womennews.co.kr/news/articleView.html…
- 4月22日付:フェミニストジャーナル・イルダ「同意がなければ性犯罪」…日本の強姦罪改正効果は?不同意性交罪で刑法改正、性暴力申告・検挙率が高くなる
‘동의 없으면 성범죄’…일본 강간죄 개정 효과는? 부(不)동의 성교죄로 형법 개정, 성폭력 신고‧검거율 높아져 4월 22일 일다 박주연 기자
https://ildaro.com/10165
<韓国視察の概要> 2025年4月13日〜16日、Springスタッフ・NPO法人ぱっぷす・メディア関係者3名とともに、韓国:ソウルへ現地視察に行きました。 本視察は、同じ文化的背景を持つ東アジア圏の性犯罪規定(刑法および特別法)の法整備や運用に関する調査・研究を行い、現行の日本の刑法性犯罪規定および性犯罪に関する特別法に内在する課題を明らかにすることを目的としています。
①公訴時効撤廃、停止・延長についての意見交換 (順次、各訪問箇所の報告記事を掲載しています)
また、今後下記を予定していますので、お楽しみに。
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【韓国視察報告1】タクティンネイルを訪問しました
【韓国視察報告2】 アハ!青少年性文化センターを訪問しました
【韓国視察報告3】韓国性暴力相談所を訪問しました
【韓国視察報告4】法律家と性犯罪・公訴時効に関する懇談会をしました
※本視察・イベント開催・白書発行は、JSPN/ジョイセフの支援をうけて実施しました。

