【ご報告】駐日欧州連合代表部 EU・日本ワークショップ オンラインイベントに参加しました

2023/01/09

12月14日(水)・15日(木)、駐日欧州連合代表部よるオンラインイベント「 EU・日本ワークショップ:ジェンダーに基づく暴力と女性・平和・安全保障」が開催されるにあたり、Springに登壇の依頼を頂きました。
Springは、1日目の「 ジェンダーに基づく暴力(GBV)の根絶に向けた法的・政策的枠組の強化:日本と EU の経験から」にて、「日本における GBV に関する法的枠組への挑戦」というテーマでスピーチをしてまいりました。

Springのスタッフのスピーチの内容をご紹介いたします。

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「日本におけるGBVに関する法的枠組への挑戦」

一般社団法人Springは、2017年に日本で初めて法人化された、性暴力被害当事者および支援者の団体です。

私たちのミッションは、性被害当事者が生きやすい社会をつくること、
ビジョンは、被害実態に即した刑法性犯罪規定見直しの実現です。

約20名のボランティアスタッフで活動しており、現代表理事は性暴力被害当事者として取材対応や講演活動を行っている佐藤由紀子です。

わたしたちはこれまで、刑法の改正を求めて、国会や政府機関に被害者の実態、声を届けてきました。

本日は、「日本におけるジェンダーベースドバイオレンスに関する法的枠組みへの挑戦」というテーマでお話しさせていただきます。

この挑戦には2つのターニングポイントがあります。
1つめのポイントは2017年です。
これまで、刑法性犯罪の処罰規定に、被害者の声は反映されていませんでしたが、当事者たちの要望にこたえて、約110年ぶりに日本の刑法性犯罪規定が改正されました。
改正の内容は次の通りです。
重罰化により有期懲役3年以上が5年以上に引き上げられました。
罪名が強姦罪から強制性交等罪に変更となり、性別規定を撤廃しました。
親告罪も撤廃され、告訴なしでも起訴が可能となりました。
監護者性交等罪が新設され、監護者にあたる者が18歳未満の者と性交した場合は、たとえ同意があっても処罰されることとなりました。

しかし、今なお大きな課題が残っています。
強制性交等罪には暴行脅迫要件があり、同意のない性行為と認められただけでは処罰されません。
地位関係性を利用した性行為を処罰する規定がありません。
性交同意年齢は13歳未満と低く、
公訴時効は10年と短い などです。

そんななか、2019年3月に、相次いで出された性暴力事件4件の無罪判決をうけ、
全国各地で、被害者たちへの連帯を示し、性暴力を許さない抗議の場であるフラワーデモが開催されました。
SpringもOneVoiceキャンペーンなどで連帯し、性暴力反対や刑法改正を求める一人ひとりの声、OneVoiceを市民や国会議員から集めました。

私たちはさらにロビイング活動をつづけました。与野党議員と面談し、署名を集め、大臣に要望書を提出し、記者会見を行いました。
そして現在、2回目のターニングポイントを迎えています。

2020年当時の森法務大臣が、性犯罪に関する刑事法検討会開催を指示、
その議論をもとに、2021年当時の上川法務大臣が、法制審議会に刑法改正の課題10項目について諮問しました。

検討会にも、法制審議会にも、Spring前代表理事の山本潤が、史上初めて性暴力被害当事者委員として議論に参加し、不同意性交等罪の創設を訴えました。

諮問された 10項目はご覧の通りです。( ※こちらからご覧いただけます

法制審議会での議論の結果、今年10月、試案が発表されました。
一部私たちの思いが反映された部分もありましたが、
・ 私たちが望んでいた「同意のない性交を罰する」という規定の創設は見送られ、被害者が「拒絶困難」であったと証明されなければ、加害者が処罰されない案となりました。
・また、性交同意年齢は16歳未満と定められたものの、5歳差要件と「対処能力が不十分であることに乗じて」という実質要件が付されました。
・地位関係性を利用した性行為の処罰規定は設けられましたが、被害者が「拒絶困難」であったと証明されなければ、加害者は処罰されない案となっています。
・公訴時効は現行から5年間延長され、さらに被害年齢から 18 歳になるまでの年数が公訴可能期間に加算される案となりましたが、実態を鑑みると著しく短いままです。

イスタンブール条約では、「同意に基づかない性交」を処罰する規定を設けるよう求めています。また「同意」は、自発的に与えられなければならないとしています。
これはYMT型の処罰規定で、日本では実現していません。

ここで、日本に「不同意性交等罪」「YesMeansYes」型の刑法がないことが、被害当時者を苦しめ続けていることがわかる日本の性暴力事件の判例を2つお話しします。
2014年12月11日、福岡高裁宮崎支部のいわゆる「無神経」判決、
2019年3月19日、静岡地裁浜松支部のいわゆる「常識」判決です。

宮崎支部では、59歳のスポーツトレーナーが18歳の生徒へ抗拒不能状態に乗じて性交し、強制性交等罪に問われた事件で、判決では被害者が「強度の精神的混乱から、被告人に対して拒絶の意思を示したり、抵抗したりすることが著しく困難であったことは明らか」と認定した上で、一方被告人は「女性の心理や性犯罪被害者を含むいわゆる弱者の心情を理解する能力や共感性に乏しく、むしろ無神経の部類に入る」、よって被告人に故意がない、よって無罪となりました。

浜松支部では、44歳の男性が25歳の初めて会った女性に対し、深夜2時にコンビニ駐車場で声をかけ、同意をえないまま性行為を強要し口に加療約2週間の怪我を負わせ、強制性交等致傷罪に問われた事件で、判決では、男性が被害者に暴行をくわえたことで、被害者の頭が真っ白になり抵抗できなかったことを認めた上で、一方、男性側が相手が抵抗できない状態になっていると認識していたかどうかは「常識に照らして疑問が残る」として、無罪となりました。

ここでお伝えしたいことは3つです。
一つ、多くの性暴力被害者は加害行為に直面したときに、固まり、抵抗ができなくなってしまいます。
二つ、加害者は「無神経」でそれに気づかなかった、あるいはそれが社会全体の「常識」として知られていないという理由で、「同意をしていると思い込んでいた」と主張すれば、処罰から免れるということ。
三つ、だからこそ、性暴力の加害も被害も防ぐためには、「No」は「No」であり、沈黙もNoであり、対等な関係での「Yes」のみが「Yes」であるという概念を社会通念とし、行為者は相手の同意を明確に確認する義務があり、そうでなければ処罰されるというルールを作るべきだということです。

この間、私たちの働きかけと国会議員、各省庁のみなさんのご協力により、次のような前向きな変化も起きています。
2020年は橋本大臣、2021年は野田大臣との意見交換を通じて、内閣府の広報にて、「相手の同意のない性的な行為は、性暴力です」と啓発していくことに成功しました。

文部科学省は、youth向けの啓発資料を作成し、「相手の同意のない状態で一方的に性的な行為をすることは性暴力です」と記載させることに成功しました。

これは私たち市民団体と国会議員、そして省庁職員の皆さんの3者の共同の成果です。

しかし、刑法の分野については、いまだに古い考えにとどまっています。
2021年5月、法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」では、委員の発言として、次のようなまとめが記載されました。
・現在の日本においては、「“Yes means Yes”の前提となるべき社会通念が十分に形成されていない」、
・「明確な拒絶の意思表示がないことが同意を示すものではないということが理解されていない」。

被害者を生まないためには、この日本の「常識」「社会通念」を変えること、そして刑法性犯罪規定をYes Means Yes型に変えること、この両方が同時に必要です。

「性的同意」に関する「社会通念」が日本に定着していないのは、被害者が声を封じられてきたからです。しかしいま、被害者が勇気を持って日本で、世界で、命がけで声を上げています。
一方で、たった今、この瞬間も性暴力被害に遭いながらも苦しんでいる方がいます。いま変化を起こす必要があります。

そして実は、来週12月19日が、刑法改正を議論する最後のチャンスである法制審議会が開催されます。ここで実現できなければ、また次の改正まで被害者が放置される状態が続きます。
そして今晩このあと19時より、、ウーマンズアクションネットワークとヒューマンライツ・ナウ主催で、【「刑法改正は問題だらけ」私たちの声を聴け!〜不同意性交を犯罪に!】オンラインアクションが開催されます。( ※こちらからアーカイブをご覧いただけます
イベントでは刑法改正を求める要望書への賛同を募っています。お読みいただき、共感していただけたら、ぜひご賛同をお願いいたします。

世界の社会通念と刑法を大きく変えるキャンペーンと対話を様々なシーンで起こし、世界から性暴力による加害も被害もなくしていきましょう。

ご清聴ありがとうございました。

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イベントでは、アン・ヴァンハウト駐日欧州連合代表部政治・広報部一等参事官が開会の辞、岡田恵子内閣府男女共同参画局長が「あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力(GBV)撤廃に向けた法的及び政策的取り組み」と題して基調講演を行いました。
Springスタッフは、セッション1「GBV 撤廃に向けたエビデンスに基づく法的・政策的枠組」の冒頭にて、スライドを使って10分間のスピーチをさせていただきました。

私たちは、今後も日本で、「同意に基づかない性行為」を処罰する規定の創設されることを目指して、様々な機会で性暴力被害当事者の実態を伝え、刑法改正の必要性を訴えてまいりたいと思いますので、ひきつづき皆さまの応援を宜しくお願いいたします。

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