2023年2月21日と3月16日、共産党法務部会のヒアリングに出席しました。
2月21日はオンラインで行われ( こちらで報告しています)、3月16日は衆議院会館にて行われました。
改正案が閣議決定され、いよいよ国会審議入りという大事な時期に、私たちの見解および要望をお伝えする機会をいただけましたこと、大変ありがたく存じます。
3月16日には主に公訴時効について、審議会での議論を辿りながら、改正案をしても残る課題についてお伝えいたしました。
改正案では、現行法の公訴時効から5年延長され、18歳未満の場合は18から被害時年齢を引いた年数がさらに加算される内容となりました。
しかし、これでもあまりに短く、被害実態に見合っていません。
5年延長の根拠とされる内閣府調査では、「相談できた」と回答した方の大部分が被害から5年の間に相談がなされていると報告されています。
ところが、この報告では約1割が「相談に5年以上かかった」と回答していることが無視されています。
また、そもそも「相談もできなかった」と回答した方が、女性では約6割、男性では約7割いたことも切り捨てられています。
調査報告の一部分のみに着目し、実際のデータと乖離した解釈をして、根拠として用いることは問題です。
法制審の委員からも、その乱暴さは度々指摘されています。
さらに、相談ができたといってもその相手は友人・知人が最も多く、次に家族・親戚となっているだけであって、全員が警察に相談できているわけではなく、その後公訴権を行使できたかもわかっていません。
Springでも、2020年に被害の実態調査をアンケートを実施しました( 結果報告はこちら)。
同調査では、挿入を伴う性被害の認識年数に「26年間以上かかった」ケースが799件中35件で4.38%、「31年以上かかった」ケースが19件、約2.38%ありました。
また、被害の記憶を喪失していた年数について、「26年以上」が10件、「31年以上」が2件という結果が出ています。
幼少期からの長期にわたる性虐待の影響で、成人してからも公訴権を行使することが不可能な状態が長く続く、という被害実態に鑑みて、時効の進行を停止するという判断は当然検討されるべきではないでしょうか。
それでもある委員の、「我が国においては、この内閣府の調査報告書以外に依拠できるような実証的な根拠は見当たらない」という発言に見えるように
『調査がないからやる』のではなく、『ないから5年でいい』という改正案でまとまりました。
海外では実際に、政府が主導で調査研究を行うことで、被害実態に即して公訴時効の大幅な改正がなされてきています。
根拠となる実態調査をしないまま、図らずも時効を過ぎてしまった被害者の公訴権を剥奪するのは、被害者にツケを回しているのと同じではないでしょうか。
政府が責任を持って主導し、速やかに調査を行うべきです。
そして、その調査をもって見直しの検討を行うよう、附則に明記することを要望します。
この度は、ヒアリングにお呼びいただきまして、誠にありがとうございました。
引き続き ビクティムファースト(被害者中心主義)の姿勢で、刑法改正にむけて歩みをともにしていただけますと幸甚です。