認定NPO法人ゆいネット北海道からご依頼を受け、2023年7月9日に性暴力被害者診療支援看護職養成講座にて、性暴力被害についての講義を行いました。ロビイングチームを代表して1名が講師を務めました。
昨年に引き続いて二回目のご依頼をいただきました。
「性被害者への理解が深まりました」というアンケート結果が多くあり好評だったということです。
Springが被害者を代表するものでは決してありませんが、被害当事者が自分の経験を通じて実態をお伝えしていく、という活動を続けていくうえで、こういったお声が届くことは大変励みになります。
昨年の報告はこちらから
この講義は、性暴力被害者の心身の早期回復に重要な、医療的心理的ケアにおいて二次被害をなくし、被害者の意思を尊重した適切な対応をとれる看護職:SANE(Sexual Assault Nurse Examiner)を養成する連続講座の一コマです。
看護師、助産師、保健師、医師の資格を有する方、または性暴力被害者支援に関心のある方が対象で、25名程ご参加いただきました。
講義の前半では、
・先月16日に参議院本会議で可決成立した、刑法・性犯罪法改正法律案の内容と議論および課題
・そこからみる性暴力被害の実態
・性暴力についての『語り(ナラティブ)』がもたらす社会や人々への影響
の3つについてお話しました。
後半では、スタッフの被害経験とそこから伝えたいことについてお話しました。
以下、担当スタッフがお伝えした内容と感想をご紹介いたします。
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今回、性暴力についての『語り(ナラティブ)』をお伝えしたのは、私自身が自分の被害経験を語ることについて、認識を改めなければいけないことに気づいたからです。
私はここ数年、性暴力に関して学びを深め、様々な説明によって「あれは性暴力だったのだ」と、自分の経験を整理してきました。
離人感・解離などによって、抵抗を諦めたこと
加害者への逆説的な感謝や迎合反応が薄っすらと芽生え、被害後も恋人らしく振る舞ったこと
被害を矮小化することで心を守るために、むしろ交際を継続したこと
むしろ性交によってのみ現実逃避ができるために、自ら性交を望むようになったこと
世界への信頼・コントロール感を取り戻すために、心配してくれた相手さえ、性交の相手としてしか取り合わなかったこと
私がこういった行動をしたのは自然なことで、悪いのは私ではなく加害者だと思えるようになりました。
でも、それがうまく説明できなければ”被害者”になれないのではダメなのです。
これは私がたまたまできたことです。
恵まれた環境で勉強し、自分の人生を振り返る時間やその作業を手伝ってくれる人に支えられて初めてできたことを、命や社会的生存が脅かされた状態にいる被害者に求めるべきではありません。
その作業が、被害者の癒やしや回復につながる場合には行われればよいのであって、その結果の産物を他人が求めるのは違います。
だから、シンプルに「同意を得ずに性的行為をしてはいけない」「同意がないのに性的行為をするのは性暴力である」というふうに、私の経験を語れるようになりたいのです。
当時の私は、交際相手との性行為をしたくなかったし、本当はやめてほしかった。
そういう「嫌だ」という私の気持ちをもって、これらを性暴力と認めて良いのです。
なぜならそこに、わたしの同意はなかったから。
今月13日に『不同意性交等罪』は施行されます。
不同意の性交が性暴力・性犯罪と認められるのが、条文上だけにならないように
適切な運用となるように注視していくとともに
私達が語り、認識する性暴力も「同意」に基づいたものにしていきましょう。
そういったことをお伝えいたしました。
ありがたいことに、たくさんのご質問をいただきました。
現場で実際に被害者と接する方々が、「性暴力被害のことをもっと理解したい」「被害者に適切な対応を取ることができるようになりたい」という想いをもってくださっていることを、本当にかけがえのないことだと感じました。
わたしの話に真剣に耳を傾けてくださったみなさんと、これからも連帯していけると確信しています。ありがとうございました。
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ゆいネット北海道およびSACRACH(さくらこ)のみなさま、そして受講してくださったみなさま、本当にありがとうございました。
ぜひともまた、性暴力被害の実態についてお話できる機会を頂戴できますと幸いです。