【ご報告】2022年度SANET養成講座で、性暴力被害についての講義をしてきました

2022/08/16

認定NPO法人ゆいねっと北海道からご依頼を受け、2022年7月10日に札幌エルプラザにて、性暴力被害についての講義を行いました。ロビイングチームを代表して1名が講師を務めました。

この講義は、性暴力被害者の心身の早期回復に重要な医療的心理的ケアにおいて、二次被害をなくし、被害者の意思を尊重した適切な対応をとれる看護職を養成する連続講座の一コマです。

この性暴力被害者支援看護職は、SANET Sexual Assault Nurse Evidence Taker)や、SANESexual Assault Nurse Examiner)と呼ばれ、1970 年代に北米を中心に発展してきました。

日本では、全国にワンストップ支援センターができたこと等をきっかけに活躍の場が広がっており、今後さらに性暴力被害者の適切な支援のために重要な役割を担っていくと期待されています。

そんなSANET養成講座において、性暴力被害当事者の声を届ける機会をいただけたこと、大変嬉しく思います。

講義の前半では、
・一昨年Springが実施した  性暴力被害実態調査 のご報告と、そこからわかる現行刑法の課題
ポリヴェーガル理論や  5F反応で説明される、性暴力に直面した被害者に起こる反応
『性暴力被害の実際』から見る、性暴力が行われるプロセス
の3つについてお話しました。

後半では、スタッフの被害経験とそこから伝えたいことについてお話しました。

以下、担当スタッフがお伝えした内容と感想をご紹介いたします。

*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

私は性暴力の被害後、医療に繋がりませんでした。もし妊娠したら死のうと思っていました。

当時中学生で受験勉強をしていた私は、「今妊娠したなんて親に言えるわけない」「まして、彼氏が避妊してくれなかったのを拒否できなかったからなんて怒られるに決まってる」と思っていました。

私だからお話できる、医療につながる事を考えすらしない性暴力被害についてお話させていただきました。

 

彼氏の言う「セックス」は性暴力だったと、今ならわかります。
避妊してくれないことも暴力だと、今ならわかります。

でも、当時の私の周りには、性暴力を「セックス」と描くものが溢れ、
「セックス」できないとかっこ悪くてダサい、という風潮がありました。

「セックスに応じることで男性の機嫌をとるのがいい女」なんて嘘だと、
「セックスを強要されたくらいで被害者ぶるなんてメンヘラ」ではないんだと、
誰か一人でも教えてくれていたら、私はもっと早く、自分のされていたことが被害だと気づくことができたかもしれません。

日常を一気に壊したり、まるごと脅威に陥れるようなものでなく、普通の日常の中で繰り返される性暴力によって少しずつ追い詰められていった私にとっては、
それが当たり前の「セックス」になり、医療の必要性という非日常には気づきませんでした。

当時の私が自分の心身を守るためにできたことは、相談機関や医療につながることではなく、

心が辛くならないようにそれを「セックス」だと思いこみ楽しむことであり、
彼氏の機嫌をとってできるだけ早く楽に「セックス」を終わらせるために、自分が性的な存在だと示すことであり、
誰もが自分を性的に扱うはずだと最初から決めつけ、それに順応し、この世界の予測可能性を保つことでした。

そんな私は「被害者」に見えなかったと思います。自分でも自分を「被害者」だと思っていませんでした。

社会にある凝り固まった「被害者」のイメージは私の中にもあって、自分に起きたことは性暴力などたいそうなものではないのだから、自分で嫌だったという気持ちに折り合いをつけ、その後の混沌とした性衝動にも自分で対処しなければいけないと考えていました。

そうして自分の被害には向き合えないまま、「性暴力をなくす活動」をしていました。

 

でもその「活動」は、性暴力による傷つきに蓋をしていては限界がありました。

非日常的で凶悪な性暴力やフェミサイドも、それが突然に起こるのではなく、
日常にありふれてしまっている、些細とされる性暴力が見過ごされていることで起きていて、地続きの問題です。

であるならば、私が経験してきたような性暴力をなくしていくことは、残忍な性暴力やフェミサイドをなくしていくことにも繋がるはずです。

だからわたしは、「私なんかが声をあげていいのか」と思うことをやめました。
誰にも、その人の体験、気持ち、考えは、その人にしか伝えられないことです。

 

わたしが伝えたかったのは、「被害者」らしくない被害者、被害を認識できない被害者、被害をおもしろおかしくしか話せない被害者がいるということです。

だから「被害者」を区別せず、見極めず、一人ひとり違うということを忘れず、その人の話を真剣に聞いてほしいということです。

医療につながった被害者にどのように対応するかというスキルを身につけると同時に、
そうではない被害者の存在、被害者を取りまく環境の実態を知ろうという気持ちも、忘れず持ちつづけていてほしいということです。

そうしていくうちに、もし自分の中にある凝り固まったイメージや偏見に直面するときが来ても、そこから逃げないでほしいということです。

わたしはその葛藤と、自分の被害と向き合うことに挑戦しています。

そして今、わたしの話に真剣に耳を傾けてくださったみなさんと、これからも連帯していけると確信しています。ありがとうございました。

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ゆいねっと北海道のみなさま、そして受講してくださったみなさま、本当にありがとうございました。

ぜひともまた、性暴力被害の実態についてお話できる機会を頂戴できますと幸いです。

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