警察庁からご依頼を受け、2021年12月15日に警察学校にて、警察大学校性犯罪専科の方々に「被害者から見た性犯罪捜査」を講義いたしました。
2018年に初めて講義させていただいてから毎年ご依頼を頂き、今年で4回目となりました。性被害当事者の声を聞くことを続けていただいていること、大変嬉しく思います。
今回も、Springロビイングチームを代表して2名が講師をさせていただきました。
全国の都道府県警察の刑事部門で、性犯罪捜査等の指揮や警察官への指導等を担当される警察官47名が対象でした。
以下、講義を担当したスタッフのレポートです。
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私は自分の被害を警察に届け出たことはありません。それ以前に、自分の被害を被害だと認識できず、誰かに相談することを選べなかったからです。
例えば『嫌なら抵抗できるのが当然だ』というような、非科学的かつ誤った認識で私を責める友人からの二次被害によって、
加害者ではなく自分を責め、社会的生存を脅かされていた私にとって、
例えばテレビやネットで目にする、男の性欲に理解があり、プライドを立て、自分も性に奔放な”セクシーでかっこいい女”像は、
私を、被害の辛さに蓋をして「自分もそんなの平気ないい女だ」というプライドの鎧を身に纏い、性暴力を許す側の人間にさせる強力な追い風でした。
被害を矮小化してその衝撃と直面するのを避けることは、私なりのサバイバルスキルでしたが、癒しに取り組むことが遅れ、自分や他者に私を傷つけることを許し続け、ますます傷が深くなっていきました。
一見平気そうで、一見問題なさそうな状況というのも、実は、そうすることでのみ被害者の社会的生存が許される綱渡りのような構造が生み出した虚構かもしれません。
そういった、相談することの心理・社会的なハードルの高さなどについてお話をさせていただきました。
「自分も悪かったのではないか」と自分を責めたり、「こんなことに気にしている自分がおかしいのではないか」と訴えることを躊躇する(絶対にそんなことはないのだけれど!)….
それでもなお、なんとか警察に被害を届け出た被害者が、そこで更に傷つけられるということがないように、被害や被害のその後、また被害者を取り巻く社会環境などについて、ご理解を深めていただく一助になっていれば幸いです。
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今回、警察の現場を持つ方々にSpringの性被害当事者がセルフナラティブを交えて、その被害が当事者に与える影響を自分で書いて読むというのは、聴いている人たちの”こころとからだ”に響いているんだと実感しました。
2020年に実施したspringの【性被害の実態調査アンケート】からの統計などをグラフにして見ていただきながら、合わせて自分の被害を語る。この方法を、今回事情があって当日参加できなくなった仲間と共に作り上げることが出来ました。
自身の被害を人の前で語ることはきついことですが、今もリアルに起こっている性暴力を無くしたい!
加害者をこれ以上作り出さないために、110年も前の法律を現状に照らして納得いくように改正したい!
誰もやらないなら当事者と支援してくれる人たちとでやればいいんだ!!
こんな思いでSpringを立ち上げた日本で初めての性被害当事者の小さな団体は、「私たちの経験が社会的な資源になる。」そんな誇りを胸に活動を始めました。
国会議員へのロビイングをし、省庁や政党や地域の団体などにもヒアリングに出かける。そして3年前からは警察大学で講義をする「場」を持つことになりました。そのような場を作ってきた初期の仲間の努力を尊敬します。簡単な事ではなかったと思います。
さて今回、私は2度の被害について述べましたが、50年や60年も前の事であっても、今も類似する被害を聞くとPTSDが起こることもあります。心が不安定になりうつうつとした怒りや無力感に落ち込むこともある。
被害者が抱える傷は長期に及ぶことが多く、今でも社会の無理解により当事者が生きずらい現実があることを語りました。
私にとって警察はあまり好きな所ではありません。30年くらい前に、性暴力に会った人たちの相談を受けるグループに参加し何度か警察に付き添い出向いた経験があります。性被害に会った本人からの聞き取りが威圧的だったり、話しが時間軸からずれたりすると口の端で笑ったり、こちらが感情的になったりするとわざと同じ話を何度も聞いたり・・・。うんざりするほど意地悪だったり。かなり昔の事ですが・・・。
ところが今回、警察官たちの聴く力が半端なかったように感じました。警察が本気で性被害の現場に立つ警察官を育てようとしているんだと感じたし、そう思えたことは凄いことだと私自身が気づけたことに驚いています。
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警察庁の皆さま、そして受講してくださった警察官のみなさま、本当にありがとうございました。