昨年6月から続いた法務省内「性犯罪に関する刑事法検討会」が、この5月21日に区切りがついたことを受けて「要望書~ ヴィクティム・ファーストの視点より ~ 刑法改正について私たちが望むこと」を公開いたしまします。
▼要望書~ ヴィクティム・ファーストの視点より ~ 刑法改正について私たちが望むこと
検討会のメンバーには当団体代表理事・山本潤が、加えて被害者心理をよく知る精神科医や弁護士、被害者支援の最前線に立つ臨床心理士・公認心理師が委員に加わり、ヴィクティム・ファースト(=被害者中心主義)の視点から検討会の議論が進んでいくのではないかと期待して見守ってきました。
しかし、残念ながら、「不同意性交等罪」の創設や、「不同意」を犯罪が成立するための要件に盛り込むという方向は明記されず、「抗拒・抵抗が著しく困難」と規定すべきであるという意見も、取りまとめ報告書※には記載されており、いままでと何も変わらない可能性も存在します。 ※取りまとめ報告書は法務省HPで公表されています。
「顔見知り」からの性被害がおおよそ8割とされる背景がありながら、議事録を確認すると、ある委員から「一定の関係性を有する相手の要求に対し、悩んだ挙句に、最終的に性行為を甘受するに至った場合には、不同意といえるかは必ずしも明確ではない」という発言が飛び出していることに驚きを隠せませんでした(発言は、第5回会議より)。
一部の委員は、性暴力被害者が加害者側から性行為を応じざる得ないようにさまざまな関係性・要因で追い詰められていく状況を最後まで理解できないなかで、議論が進んだのではないかと推測しています。
「不同意性交等罪」の創設がなければ、もしくは「不同意」を犯罪が成立するための要件に盛りこまれなければ、性暴力被害者から、
「セカンドレイプが怖くて、親しい友人にも打ち明けられなかった」
「警察に行ったのに、被害届を受理してもらえなかった」
「勇気を出して親や友人に打ち明けたけれど、私にも落ち度があると責められた」
という言葉が出てくる状況を変えることができません。あくまでも被害者側が抵抗することを求められることに変わりはないからです。
ほかに以下の論点についても、取りまとめ報告書内では、実現に向けては厳しい意見があったり、反対意見との両論併記となっており、ヴィクティム・ファースト(=被害者中心主義)の視点から話し合いが行われたのかと、今後の法制審でどのように決定されていくのか、不安を持たざるえません。
・性交同意年齢の16歳未満に引き上げ
・地位関係性に関する規定の創設
・公訴時効の撤廃
そこで、あらためてヴィクティム・ファーストの視点から刑法改正に望むことを掲げます。