10月27日(金)、福岡県のワンストップ支援センターである 性暴力被害者支援センター・ふくおかを視察させて頂きました。
福岡県では、2019年に性暴力根絶条例を日本で初めて議員提出条例で可決し、施策の柱として
Ⅰ.性暴力根絶に向けた教育・啓発活動
Ⅱ.性暴力被害者支援
Ⅲ.性暴力加害者対策
を打ち立てていますが、かつて福岡県の性犯罪立件数が全国2位であった事を踏まえて、強い思いで制定されたとの事です。
性暴力被害者支援センター・ふくおかHP(https://fukuoka-vs.net/savs/)より
性暴力被害者支援センター・ふくおか(以下ふくおか)は、2013年、弁護士や医師が中心となって2000年に立ち上げた公益社団法人福岡犯罪被害者支援センターを母体として設立。2015年からは24時間365日体制に拡充されています。
ふくおかの支援体制は、相談員35人のシフト制で、1ケースにつき相談員2~4人の担当制で刑事手続き(警察・検察・裁判所)に限らず、病院や法律相談、行政窓口にも同行支援を継続的に行います。また、サテライトオフィスとして、北九州相談室を設けています。
被害者の身体的ケアとして、県医師会から紹介を受けた提携病院(33病院)を受診し、緊急避妊薬の投薬、性感染症の検査・治療、妊娠中絶を行います。性感染症の治療は、県の性暴力根絶条例が出来て回数制限がなくなり、肝炎やHIV検査の対応も広がりました。また妊娠中絶も、以前は緊急避妊薬で防げなかったケースだけ公費対応だったものが、被害による妊娠は全て公費で中絶出来るようになったそうです。
精神的ケアも重視しており、県内23カ所ある提携精神科・診療内科を紹介し、心理士によるカウンセリングも含めて3回まで公費助成(薬代も3回まで)を行い、受診のハードルを下げているそうです。また、精神科医師の性暴力への理解を深めるため、相談員が病院への付き添いを行い、被害者への配慮を求めているとの事でした。
司法手続きの支援については、県のスキームにより提携病院において証拠採取を行い、警察・検察に尽きそう提携弁護士を紹介するそうです。提携弁護士は58人、その半数以上が女性弁護士との事で、法律相談の初回は県弁護士会の委託援助事業として公費支出制度があるとの事でした。
また、被害により職場や学校に行けなくなった被害者に対しては、緊急宿泊の支援、公営住宅の優先入居や生活保護申請の付き添い、就労支援等、生活支援も相談体制の中で行われるそうです。
福岡への電話相談の新規実人数は2020年525人、2021年453人、2022年432人と減少傾向でしたが、本年7月の改正刑法施行を受け、7月~9月の新規相談件数は1.3倍に増加し、直接支援件数も94件と1.6倍に増加したとの事です。
また、性暴力対策アドバイザー派遣制度により、公立学校全校にアドバイザー派遣が行われているとの事ですが、この制度の定着により、小学校を含む学校関係からの相談が増加しているとの事でした。その証拠に、2022年度は10歳未満の直接支援が13%(前年度5%)に増加していました。
県条例もあり、財政的にも充実していると思われるふくおかは、全国のワンストップ支援センターの中でもトップランナーに位置付けられると思いますが、相談件数と直接支援件数の急激な増加により、キャパ一杯で綱渡り状態だという見解が示され考えさせられました。
今後も、被害当事者団体の目線から、日本全国のワンストップ支援センターの実態に迫っていきたいと思います。