私たちが国際的な活動をしている理由〜性的同意とイスタンブール条約〜

2023/01/15

私たちはSpring設立当初から、性暴力被害や被害者支援に対して先進的な取り組みを行なっているイギリス、スウェーデンなどの考え方を学び、国際的な視点も視野に入れた活動を行なってきました。概要は以下の通りです。

 

  • イギリス

・2018年7月、英国を視察訪問
・視察を日本社会に還元するため視察報告会を開催しました
・視察の際に英国大使館とのご縁をいただき、2021年3月には英国大使館にて「被害者支援で必要な配慮」を講義しました
・2022年12月、英国大使館クリスマス・レセプションに参加しました

 

  • スウェーデン

・2020年1月、スウェーデン刑法を学ぶ院内集会に共催団体として参加しました
「スウェーデンに学ぶ被害者重視の刑法改正 〜強姦とは何か?スウェーデンの性交同意法が強姦の定義を変える〜」

 

  • 駐日EU代表部

・2022年11月、駐日EU代表部・国際協力NGOジョイセフ共催のイベントでスピーチしました。テーマは「日本で性暴力対策としてかけていることは何か」
・2022年12月、駐日欧州連合代表部 EU・日本ワークショップ オンラインイベントでスピーチしました。テーマは「日本における GBV に関する法的枠組への挑戦」

   ※GBVとは”Gender Based Violence”の略称で「ジェンダーに基づく暴力」

 

この、国際的な視点に共通しているのは「性的同意とは何か?」という考え方です。

 

イギリスでは、自由(Freedom)と 能力(Capacity)を 前提にした、選択(Choice)がされることを性的同意と定めています。

また、スウェーデンでは、2018年7月1日、性行為に関して「積極的な同意(Yes)」を必要とするという新たな性犯罪規定が施行されました。新たな規定は明示の同意に基づいています。つまり性行為は自発的なものでなければならない、「Yes」だけが同意したということであり、それ以外は「No」(不同意)と解釈するという性的同意の考え方が法制化されました。

 

もう一つ紹介したいのが、「イスタンブール条約」です。

 

イスタンブール条約は、国際人権条約で、性暴力を含めた女性への暴力に対して、国家が責任を持ち、暴力への対策を行う内容の条約です。性暴力を受けるのは、女性だけにとどまりません。あらゆる年齢層の男性、LGBTQIAなどの性的少数者も性暴力被害を受けています。

この条約は、年齢や人種、宗教、社会的出身、移民/難民、性的指向などにかかわらず、あらゆる属性のすべての女性と女児を対象としているほか、女性・女児の中には、特に暴力を受ける危険性が高い人たちがおり、国家は彼らの特定のニーズを考慮しなければならないとされています。



では、条約の中身とはどのようなものでしょうか。

 

予防では女性に対する暴力を容認するような態度、性別の役割、固定観念を改めることや、性暴力が心身に与える影響などへの理解も求めています。

また訴追では、女性に対する暴力の刑罰化と、適切な処罰を確保することを定めています。


特に注目していただきたいのが、第36条です。

イスタンブール条約では、同意のない性交を犯罪として認め、処罰対象とすることが義務付けられています。

日本では内閣府から「あなたの同意のない性的言動は性暴力です」と広報されていますが、刑法では、被害者に抵抗したこと、もしくは抵抗できない状態だったことを証明させる暴行・脅迫要件が残されており、同意のない性交はそれだけでは犯罪として認められていません。

日本でもワンストップセンターが全国47都道府県に一箇所ずつ配備されるようになり、少しずつ支援体制が広まっていますが、先ほど紹介した被害者支援の先進国でもある、スウェーデンやイギリス、イスタンブール条約から学ぶことが、まだまだたくさんあるのではないかと思います。

 

ちなみに、この条約に署名、批准している地域はご覧の通りです。

 

2020年時点で34の締結国があり、先進7カ国と欧州連合(EU)に代表される、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアなども批准や署名をしていることが分かります。

日本も、各国のジェンダーに基づく暴力への取り組みを積極的に取り入れることで、性的同意のない言動(=性暴力)の犯罪化を進め、本来守られるはずの被害者を確実に守る制度作りを前進させる必要性が高まっています。

被害者保護の観点からも、イスタンブール条約に批准する価値はあると言えます。

 

 Springが毎月2回発行しているメルマガ「すぷだより」でも、2018年の開始当時から、「海外ニュース」として世界各国の刑法や被害者支援、それを被害実態に沿ったものにするためのムーブメント、#MeToo運動などについて紹介しています。

イスタンブール条約についても、たびたびお伝えしてきました。世界の現在地を知ることで、日本はいまどういう状況に置かれているのか、課題はないかということが見えてきます。こちらもぜひ購読&注視してください。

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スライド参考資料

  1.  欧州評議会ウェブサイト イスタンブール条約 https://rm.coe.int/ic-general-leaflet-in-japanese/1680a4f128
  2. 立法と調査 2020. 7 No. 425 参議院常任委員会調査室・特別調査室 欧州評議会イスタンブール条約 ― DV及び女性に対する暴力への対応 ― 森 秀勲 (内閣委員会調査室) https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2020pdf/20200708028.pdf

 



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